2016年12月25日

年間映画興行ランキング、『君の名は。』世界累計で日本映画過去最高の可能性も

映画シーンにとってエポックメイキングな1年となった2016年の年間映画興行ランキングTOP10を興行収入とともに発表。1位はもちろん、歴代邦画興収ランキング2位に躍り出る快挙となった『君の名は。』(12月18日時点で興収209億円)。2位の『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(116億3000万円)にダブルスコアに近い大差をつけた。TOP10は、邦画6作(実写2作、アニメ4作)、洋画4作(実写1作、アニメ3作)とアニメが強さを見せた。2016年の映画シーンを総括し、その“重要な意味”を映画ジャーナリストの大高宏雄氏が綴る。

米映画のように世界水準で映画収益を引き出した『君の名は。』
 多くの局面で、『君の名は。』が日本映画界のエポックメイキングたりえた1年であった。単に、国内におけるメガヒットの興行を築いた功績だけではない。オリジナル作品の製作のありようから、中国をはじめとする海外展開まで、アニメーションという枠を超え、日本映画の近年の国内外の歩みを大きく変えていくようなダイナミックな製作、興行の足跡がとても重要な意味をもったからである。

 12月18日時点で、『君の名は。』の国内の興収は209億円となった。中国では日本映画の新記録となる約90億円まで伸ばし、国内の成績と合せれば、現時点で300億円近くになる。これには、台湾、香港、タイなどは含まれていない。さらに、これから公開される米国やヨーロッパなどの成績を加えると、世界累計では1本の日本映画としては『千と千尋の神隠し』(国内308億円)を超えて、過去最高の興収になる可能性も出ている。いわば、日本映画が米映画のように、世界水準で映画の収益を引き出すことになったのである。ありえないことが起こった。“ダイナミック”“とても重要な意味”とは、とくにこのことを指す。




 ちなみに、上映は来年の春あたりまで続くという。これまで『千と千尋の神隠し』が1年間延々と上映され続けたことがあった。館数は都内の1館だけであったが、『君の名は。』も今後、来春を超えてどこかで延々と上映されていくかもしれない。12月10日、11日の2日間では、正月興行の期待作である『海賊とよばれた男』のスタート成績を上回ったくらいだから、その超ロングランも納得がいくというわけである。

◆東宝ゴジラ新時代の幕開け。ブランド真価が問われる次作
 3位に入ったのが、『シン・ゴジラ』だ。12月18日時点で、81億円を記録した。さすがに、ここからは大きくは伸びていかないだろうが、こちらもエポックメイキングな興行になった。前にも少しお伝えしたが、動員(入場人員)で見ると、この興行のすごさが実感できる。18日時点で559万人という動員は、ゴジラシリーズの初期作品(50年代、60年代)に肉薄する。これは、シリーズ最高動員の『キングコング対ゴジラ』(1962年、1255万人)、第2位の『ゴジラ』(1954年、961万人)などに次いで歴代の第5位。興収以上に、この動員の威力の点において『シン・ゴジラ』は、ゴジラ新時代の幕開けを告げることができた。

 東宝は、ゴジラはディズニーのミッキーマウスに匹敵するブランドだと言い放つ。ただ、そのブランド性も『ゴジラ FINAL WARS』(2004年、12億2000万円)の頃は、息も絶え絶えだったことは、記憶しておいていい。ミッキーマウスと違って、ゴジラは過酷な日々を生き抜き、復活を遂げたのである。

 ただ、真の復活は、今後の動向にかかってくるだろう。東宝は、次の日本ゴジラをどうするのか、いろいろ考えを巡らせている。誰が手掛けるにしろ、次作には大変な重圧がのしかかる。これを乗り切ったときこそ、ゴジラは真のブランドとして、閃光たなびく大咆哮を、世界に誇示することができるのだろう。

◆日本映画界のなかで一段と高くなっているアニメシェア
 アニメーションの隆盛も、今年の大きな話題のひとつであった。興収20億円を超えた作品が、邦画、洋画あわせて12本あった。昨年の13本には及ばなかったものの、2000年以降では2番目に多い。ただ、シェアがすごいのだ。

 邦画、洋画それぞれの興収上位10本のなかでは、邦画が6本(『君の名は。』209億円(12月18日時点)、『名探偵コナン 漆黒の悪夢』63億3000万円、『映画 妖怪ウォッチ エンマ大王と5つの物語だニャン!』55億3000万円、『ONE PIECE FILM GOLD』52億円、『映画ドラえもん 新・のび太の日本誕生』41億2000万円、『ガールズ&パンツァー 劇場版』24億円)、洋画が3本(『ズートピア』76億8000万円、『ファインディング・ドリー』68億3000万円、『ペット』42億5000万円)。さらに、邦画と洋画で20億円を超えた全作品の累計興収のうち、アニメは何と約55%を占める。

 興収上位という作品枠ながら、アニメのシェアは非常に高い。しかもこれには、12月18日時点で7億円を超えた『この世界の片隅に』は、入っていないのである。個別のアニメの製作や収支、製作会社の運営などには、いろいろ問題点があるとも聞く。ただ、アニメのシェアが日本映画界のなかで一段と高くなっているのは、間違いのない事実なのである。

◆『スター・ウォーズ』が一矢を報いるも“ファン枠”を超えず
 外国映画は、2位の『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』が一矢を報いた。ただ、いろいろなところでお伝えしたように、これは目標値を下回っている。100億円を超えたのは、明らかに『スター・ウォーズ』ブランドのなせる業だが、これまでの大きな実績を踏まえると、100億円超えにして、その限界もまた垣間見えたのである。

 公開されたばかりの『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』が、やはりファン中心であった。前作『フォースの覚醒』の出来を遥かに凌ぐ素晴らしい作品で、映画が終わったとたんに涙がどっと溢れるという得難い経験をした。注目したいのは、この涙に、どれほどの“一般性”があるのかということだ。強く、あってほしいのである。

 今回、以上4つの要点に絞ったことをご理解願いたい。それでも各々、様々な切り口から、もっと広げていかなければならないテーマや問題点が山積みなのである。日本映画(界)は、いったいどこへ行くのか。ひとつ、2016年に登場した世界水準の作品が、今後に及ぼす影響をしかと見定めたい。この快挙が一過性で終わらないことを祈る。
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posted by 得笠野 哲太 at 13:31| アニメ | 更新情報をチェックする